ヒトが人体錬成で生き返るのなら、
こんなにも命は切なくない。
命は万物に等しく存在し、
我々は個でありながら同時に世界そのものである。
母親と三人暮らしのエドワードとアルフォンスの兄弟には子どもの頃から錬成術師の才能があった。物質を原子から再構成して何でも作る「錬金術」がある世界。だが、人間を錬成する「人体錬成」は禁忌とされていた。
しかし、病気で母親を失った幼い兄弟は人体錬成で母を生き返らせようとする。その結果、錬成は失敗しエドワードは左足を、アルフォンスは全身を失ってしまう。右腕を対価にしてアルフォンスの魂を鎧に定着させるエドワード。
兄弟は失った全てを取り戻すための旅に出る。
この世界の「錬金術」の原則は「等価交換」。
何かを得るには何かを対価にしなければならない。
それは、全てに通じる真実でもある。
人体を構成する物質を集めて錬成しても「人間」は再構築できないのだ。
生命には「魂」があり、それには対価がない。
「鋼の錬金術師」が偉大だったのは、
生命とは何か、生きるとは何かを常に問いかけながらも、
「少年マンガ」という立ち位置からブレることがなかった点にあると私は思う。
起伏に富んだストーリー。
兄弟は様々な人と出会い、成長していく。
国家レベルの陰謀。
物語は次第に広大なスケールの全容を見せていく。
魅力的なキャラクター。
エドワードとアルフォンスに錬金術の基礎を叩きこむイズミさん最強。
「何者だ?!」「主婦だッ!」の斬り返しがいい。
氷の女王・オリヴィエ少将、女傑!
ヒロインのウィンリィも優秀な義手義足技術者だし肝が据わっているし、
総じて「ハガレン」の女性は魅力的だ。
敵のホムンクルス(人造人間)たちも非常にキャラが立っている。
死による別れ。
本当に色々な人が死ぬマンガだけど!
少女ニーナの死とヒューズさんには泣けた…。
そしてアクション!
国家に認定され軍属として働く「国家錬金術師」には二つ名がある。
エドワードの二つ名が「鋼の錬金術師」。右腕右脚が義手義足であることに由来する。
二つ名はそれぞれの錬金術の特徴をも表す。
焔の錬金術師ロイ・マスタング大佐は火炎を操るのが得意。「雨の日は無能」。
様々な術を使い敵と戦うバトルがすごい!
最後に、正義は必ず勝つ!まさに少年マンガの王道!!
間違いなく時代を創ったマンガであった。
そういうマンガに小手先のごまかしはない。
この世界の「真理」とは何か?
答えのひとつがこのマンガにはある。
それだけが正解では、もちろんないのだけれど。
深い哲学を読み取ろうとすればできる、それほどのマンガである。
「鋼の錬金術師」は全27巻で完結しています。
名作です!


